徳島剣山世界農業遺産支援協議会通信-No.11

≪剣山系の傾斜地農耕システムは、今回の国内候補は見送り!

しかし、徳島を変える第一歩の大きな成果! 再挑戦へ向けて!≫ [平成26年10月22日(水)]

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 ※徳島剣山世界農業遺産支援協議会会長・永井 英彰

・農水省は10月21日、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産候補に岐阜、和歌山、宮崎の3件を選んだ。エントリーしていた県西部の「剣山系」は選考から漏れた。地元をはじめ各界の協力を得ましたのに、落選したことに対し、支援協議会会長として力が及ばなかったことをまずお詫び申し上げます。
・国内7地域から選ばれたのは「岐阜県長良川上中流域」「和歌山県みなべ・田辺」「宮崎県高千穂郷・椎葉山」の3地域。2年に1度の認定となっている。国連は「その地域の農業が世界に向けて何を発信できるか」に重点を置いている。剣山系には急傾斜地でもカヤを使うことや石積みで土砂の流出を防ぐという素晴らしい伝統技術を持っている。しかも、地質、地形の多様性を、数千年に渡り農業の叡智を駆使し世界に類例のない農業を生み出している。すなわち、超急傾斜地の山城町、井川町、一宇には、長さや太さのゼンマイが日本一と評価される。また高標高利用農業では、水の丸には全国有数の夏イチゴや、瀬戸内で最大の「雨よけ栽培の夏秋野菜」の有名な特産地がある。さらに、畑には茶、ウド、タラ、ミツマタ等も全国有数である。このように、地勢を巧みに生かして、持続可能な産地を形成しており、世界のあらゆる農業の参考モデルとなる技術や知恵、思想がある。特に、この農法を支える、共同意識を作る仕組みを見ると、集落の周囲を涵養林の森林で囲み、さらにその中に鎮守の森やお堂を中心に配置し、農場は同心円状に配置している、高度な安定した持続可能な集落設計で世界に誇れる土地利用である。しかも相互扶助による、安全安心の暖かい集落を形成している。

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 ※9月の農水省による現地調査の風景(つるぎ町貞光字猿飼)

・また、この鎮守の森の意義は「いらずの森」である。アニミズムとは、すべてに神が宿ると言う信仰で、その象徴である縄文時代からの石棒を御神体にし、農業生産の精神的な支柱にする方法で菌を保存している。さらに、アフリカの主食で、これまで確認されていないヤツマタ(四国ビエ)など雑穀の原種をたくさん残している。
・この他、縄文以来の石棒や、先祖に対する信仰や畏敬の行事を今に残している。これらは、今後の急傾斜地のアジア、アフリカその他に役立つ農法と信仰、心情の組み合わせである。その意味で申請7件中、困難な条件を創意工夫で克服し、自然に対する畏敬の心情の組み合わせ成果である「急傾斜地農耕システム」が、今でも世界の農業に貢献できると確信している。選考とは認定基準の適用の差であり、優劣がつくような次元の低い話でなく、遺産としての条件は徳島の申請内容が1番であると確信した。


・さて、認定基準であるが、今年はFAOが5つの基本認定基準を示した。①知識システムと適応技術、②食料と生計の保証、③生物多様性と生熊系機能、④農文化、⑤優れた景観と土地水管理。この基準に従えば「剣山系」は全て条件を満たしている。ただし、生物多様性のデ-タ、例えばカヤ場にどのくらい植物や昆虫がいるのか等のデ-タが必要であった。しかし、このFAO基準の上に、先進国基準が3つある。①変化に対するレジリエンスの強化、 ②多様な主体の参加による自主的な取組、③6次産業化を通じた地域活性化。すなわち、農水省は6次産業化(経済効果)が、できているかなどを基準に置いているようだ。しかし、農業遺産の本来の趣旨の内容が、選定された3地域から、世界に向けてどんな農法を発信できるのだろうか。この疑問はFAOの最終判定に待つ必要がある。
・後で反省すれば、①推進母体の実践主体が弱い、②他県と比べ行政のリーダー層、団体の取り組み度、本気度が低いーなど数々ある ➂反面、行政、団体、企業、NPO等多様な主体の参加を求めたが、これを越える私たち日本初の多様な人材による支援協議会ができた。初めて横断的な学者、企業人、民間の学識経験者の結集ができ、徳島の未来を語り共有できたものは大きい。
・“世界”農業遺産であるから、世界と言う柱が身近なものになり、世界基準で社会や大学、県民が活動できる視点を持つことができた。特に大学も世界の中でどのように特徴を出して生き残るかを考えており、先生方とも共通の問題として深く討議できるようになった事は有意義だった。

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 ※剣山系の一の森から見た朝日、徳島の未来は明るい、徳島再興に
   向けて第2ステージが始まる(撮影・林 博章)

・徳島は食の女神・オオゲツヒメの国である、阿波の農業遺産認定により、日本の食の未来は開けると信じています。私たちもできるだけ足を運びますので、農家の皆様や心ある県民の皆様も落胆することなく、支援活動に邁進し、2年後を目指して頑張りましょう。

以上

[作成] 林 博章

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