阿波世界農業遺産

祭祀遺跡編-写真展2

穴吹町田方の石積神殿(鎮守さん)

穴吹町田方の石積神殿(鎮守さん) ・「白人神社」に奉祀する忌部の宮人が住む穴吹町東岸の標高50~100mの田方集落の中心部には、「田方大師堂」の御堂前の椋の巨樹の袂に鎮守さんと呼ばれる日本に類例を見ない積石神殿がある。それは、長さ3.5m・幅1.3m・高さ1.4mの長方形型の基壇の上部に薄い石板を2枚立て、その上に石板を置いて四角囲いとし、内部をカミが坐す石殿3基を構築し、内部に縄文系の丸石や石棒ようの御神体石を置き、注連縄を張っている。石積祭壇の左上には、高さ約40cmの三角錐状の立石を祀る。神殿前には、高さ約1.5m、幅50cm程度、厚さ10cmの立石が2本、南側に1本と、合計3本が立ち、神代のマツリ場が形成されている。神代のマツリ場であるが故に、後に仏教が流入した際に神仏習合思想で「御堂」が置かれ、江戸期に庚申信仰などが流入し、このような祈場・集会所が形成されていったと見られる。これは、社殿が成立する以前のカミ信仰の起源となる簡素な石造祠の信仰形態が発展したものと考えられ、カミ信仰の深化形態が見られるのであり、縄文以降の信仰をもつ農村文化を現代景観にまで継承しているといえる。

穴吹町宮内の磐境神明神社の石積神殿

穴吹町宮内の磐境神明神社の石積神殿 ・標高50m~100mに位置する美馬市穴吹町宮内は、穴吹川中流西岸の盆地にある。その中心には「白人神社」が祀られ、その西南約100mには、椎・樫の照葉樹林を中心した森林が生い茂る神明山の小丘がある。そこの急な石段を約130段登り切った頂の平坦部には、穴吹町指定文化財「磐境神明神社」(五社三門)の神明宮がある。それは、社殿の成立以前、石垣囲いの聖域をもつ神殿で、神道祭祀の原型となる「磐境」の類であった。幅は1.5~2.0m、高さ1.2~1.8m、東西約22m、南北約7mの長方形型で、南側が正面となり、3ヶ所の入口がある。上には、板石が掛けられ門状をなし、俗と聖とを区別する聖域・神域への入口を演出している。内部には、奥にプラットフォーム状の基壇が設けられ、上部に石板を四角形型に組み、内部を神が坐す空間とする石殿が5基設置されている。宮内地区の農村の守り神として神社の原点をなす神代の「磐境」(マツリ場)が形成されていることは意義深い。これは、社殿が成立する以前のカミ信仰の起源となる簡素な石造の信仰形態が発達したものと見られ、貴重な神代以降の農村文化を現代にまで継承しているといえる。

一宇の「天磐戸神社」の石窟遺跡と天岩戸神楽

一宇の「天磐戸神社」の石窟遺跡と天岩戸神楽 ・標高約550mにある美馬郡つるぎ町一宇字法正の山上部に祀られた「天磐戸神社」は、往古は「忌部神社」の摂社であったと伝わる。天手力雄命を祭神とし、像高32cmの天照大神の木像が安置され、本来の主神は天照大神と伝わる。奥社は「天岩戸」と呼ばれる石窟・磐座(町天然記念物)で、付随する約7m四方のテーブル岩は「神楽石」と呼ばれる。各地に「天岩戸神社」は点在するが、記紀に記述される天照大神の天窟隠れの舞台装置をこれだけ具備している遺跡は当地だけであろう。また、社殿が成立する以前のカミ信仰の源流となる石窟・磐座の上で伝承に基づく「天岩戸神楽」を奏するのは全国でつるぎ町のみであり、その農業民俗文化的価値は明らかに世界が評するものである(写真は石窟から登場した天照大神。)

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽)

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽) ・標高約550mにある一宇字法正の「天磐戸神社」の奥社では古来より「天岩戸」と呼ばれる石窟・磐座(町天然記念物)の約7m四方の「神楽石」の上で天岩戸神楽が奏されていた。別名は「忌部神楽」という。写真は、神楽岩の上でスサノヲが刀を携え登場するシーン。現在は、正月未明に貞光の「松尾神社」で奉納されている。

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽)

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽) ・標高約550mにある一宇字法正の「天磐戸神社」の奥社「天岩戸」と呼ばれる石窟・磐座(町天然記念物)の約7m四方の「神楽石」の上で神楽を奏する岩戸神楽保存会のメンバー。現在は、正月未明に貞光の「松尾神社」で奉納されている。

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽)

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽) ・標高約550mにある一宇字法正の「天磐戸神社」の奥社「天岩戸」と呼ばれる石窟・磐座(町天然記念物)の約7m四方の「神楽石」の上で岩戸神楽(忌部神楽)を舞うアメノウズメ。別名は「忌部神楽」という。写真は、神楽岩の上で御幣を持ちて踊るアメノウズメ。現在は、正月未明に貞光の「松尾神社」で奉納されている。

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽)

一宇字法正の「天岩戸神楽」(忌部神楽) ・標高約550mにある一宇字法正の「天磐戸神社」の奥社「天岩戸」と呼ばれる石窟・磐座(町天然記念物)の約7m四方の「神楽石」の上で天照大神を天岩戸から引き出すために、岩戸神楽を舞うタジカラオ。現在は、正月未明に貞光の「松尾神社」で奉納されている。


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