阿波世界農業遺産

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」

・剣山系で持続的に傾斜地農業を営むには、土壌流出を防ぐ高度な知恵と技術が肝要で、剣山系では一応にカヤを施用する農文化が見られる。それは、伝統的にカヤ場(肥場・肥野・肥山)と呼ぶ採草地を確保し、秋にカヤ刈りを行い、伝統農業のシンボルと位置付けられる[コエグロ]を作ることで保存し、そのカヤを春に傾斜畑に投入、土壌流出を防止するのである。傾斜畑にカヤを敷く意味と効果は、他に持続的な施肥効果、雑草防止、保水力、保温力、ミミズ・小虫・微生物などの養成、生物多様性の保全など多岐に渡る。なお、剣山系では、カヤ(ススキ)は、「コエ」と呼ぶ。採草地(カヤ場)も、伝統的に[コエバ](肥場)、[コエノ](肥野)、コエヤマ[肥山]と呼ぶ。カヤ刈りは、[コエカリ]と呼ぶ。これは、カヤは肥料になるという伝統用語であり、それは剣山系で持続的に農業を営むため、自然の循環を切らない思想に基づく剣山共通語、「ソラ世界」共通語なのである。

・「コエグロ」の完成作品を見れば、「ソラ世界」の人々の美意識が感じられ、芸術作品であることが理解できる。人々は競って芸術性を高めた。「コエグロ」は、日本原風景となる「ソラ世界」の技術を結集した芸術作品(ジャパン・コエグロ・アート)[Japan Koeguro Clative Art]なのである。コエグロを保存するポイントは、カヤを腐らさず保管させることであり、上部に穂を出さず、細高い方が良く乾燥する。
[作成] 林 博章

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」1
※天空の山里世界のカヤ場に作られたコエグロ群。(美馬市穴吹町渕名)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」2
※コエグロを作る風景、高さは3mにもなる。(美馬市穴吹町馬内)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」3
※今でも、場所により背負籠でカヤが運ばれる。(つるぎ町一宇)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」4
※美馬市穴吹町馬内のカヤ場に作られたコエグロ、カヤ場は山野草や薬草の宝庫となる。

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」5
※つるぎ町半田字高清のロケット型、上部カバー付きのコエグロ。

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」6
※美馬市穴吹町半平のカヤ場に立つ尖塔型のコエグロ群、水系によりコエグロの形状が違う。
  農業が多様なら、コエグロの形状も多様。

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」7
※カヤは束にされ、畑地の一角や納屋でも保管される。(美馬市穴吹町西山)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」8
※カヤ場に立つ形状の美しいコエグロ、芸術性が高い。(三好市山城町下名)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」9
※カヤだけでなく、落葉も入れて巻くのがコツ。有機農業の原点。
 (つるぎ町一宇の大宗)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」10
※カヤは、カヤ切りで切カヤにされる。切カヤを畑に投入すれば即効性をもつ。
 (つるぎ町一宇)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」11
※風の強い傾斜地では、風よけのためハデにカヤ束を巻き付け、門垣が作られる。
 (美馬市穴吹町猿飼)

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」12
※剣山系では、コエグロ作り体験などが観光体験ツアーに組まれつつある。
  これは、三好市東祖谷山の栗枝渡のコエグロ群。

剣山系の伝統農業のシンボル「コエグロ」13
※美馬市木屋平の谷口に作られたコエグロ。


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