阿波世界農業遺産

伝統農業編-写真展3

穴吹町猿飼の天上の棚田

穴吹町猿飼の天上の棚田 ・穴吹川東岸の山上標高約500mに形成された猿飼の高地性傾斜地集落は、典型的な「ソラの世界」の集落である。頂上部に涵養林と生物多様性を保障する森を残し、鎮守の森「新田神社」を祀り、その隣に天上の里山の棚田が作られている。棚田の向こう側には、穴吹川西岸の高地性傾斜地集落である中野・西山・渕名であり、まさに「ソラの世界」たる由縁の風景となっている。

穴吹町渕名の伝統的カヤ利用農法

穴吹町渕名の伝統的カヤ利用農法 ・美馬市穴吹町の渕名集落の山上部、標高約430m付近の傾斜地畑で見られるカヤ利用農法。保水性・排水性をよくするため、また肥料とするためカヤがマメ畑に大量に投入されている。踏み肥とも呼ばれる。こうすればカヤ下は、作物の成長に有用な微生物やミミズの宝庫となり、生物の多様性が保証される。このような農業は、古代刈敷農法、かつ自然循環型の有機物利用農法であり、阿波の風土が生み出した[ソラの世界]特有の伝統農業でもあった。

穴吹町梶山の農業風景①

穴吹町梶山の農業風景① ・美馬市穴吹町の穴吹川西岸の標高150~375mの地点に位置するのが梶山集落で、古代より忌部氏が住んでいた。その民家隅の一角で、カヤを敷き詰めて小さな畑地を作り、野菜を栽培している。その石垣は、スレート状の結晶片岩(緑泥片岩)を積み上げたもの。これら山間部の忌部集落に見る石積技術が畿内の前期古墳の竪穴式石室に導入されることになる。その下部には、カヤを施肥等に用いた茶(カヤ茶)が栽培されている。小さいながら随所に土地の環境を生かした伝統的な農法により育まれ維持されてきた土地利用・技術が垣間見られるのである。

穴吹町梶山の農業風景②

穴吹町梶山の農業風景② ・美馬市穴吹町の穴吹川西岸の標高150~375mの地点に位置する高地性傾斜地集落が梶山で、古代より忌部氏が住んでいた。そこでは、大規模な傾斜地農業が展開されている。傾斜地上部の急斜面でカヤを利用して茶を栽培し、下部の傾斜畑では、カヤ利用農法で豆が栽培されている。保水性をよくするため、肥料とするため大量にカヤを畑に投入している。カヤ下は、作物の成長に有用な微生物やミミズの宝庫となり、生物の多様性が保証される。このような農業は、阿波の風土が生み出した[ソラの世界]特有の伝統農業であった。

穴吹町首野の自然循環型農業

穴吹町首野の自然循環型農業 ・忌部の宮人が住む美馬市穴吹町の首野地区で見かけた風景。畑地に、コエグロ(カヤ束・肥料束)が作られている。また、畑地には、自然に枯葉が落ち溜まっている。このような農法は、自然循環型の有機物利用農法で、その土地の環境・風土を最大限に生かした農法となる。まさに、「ソラの世界」は、自然の循環体系の中で農村がここまで維持されてきたのであろう。

穴吹町田方の伝統的カヤ利用農法

穴吹町田方の伝統的カヤ利用農法 ・「白人神社」に奉祀する忌部の宮人が住む穴吹川東岸の標高50~100mには田方集落がある。その田方地区の最上部は神原と呼ばれる。その傾斜畑には、葉菜類が植えられ、畦には保水性・施肥のため大量にカヤが投入されている。これは踏み肥とも呼ばれる。このような農業は、自然循環型の有機物利用農法であり、阿波の風土が生み出した[ソラの世界]特有の伝統農業である。

穴吹町田方字神原の森とコエグロ

穴吹町田方字神原の森とコエグロ ・白人神社に奉祀する忌部の宮人が住む穴吹町東岸の標高50~100mの田方集落の最上部付近を神原と呼ぶ。山中には、「忌部の七神石」と呼ばれる祭祀遺跡がある。最上部の緒方家の前には、センダンの巨樹が神原の守り神として残され、袂には巨樹信仰による石積祠が祀られている。その巨樹の森を崇めるように、下斜面に傾斜地畑が形成され、冬場には次春の肥料などに使用するコエグロ(肥料用のカヤ束)群が作られている。生物多様性を保障する巨樹思想も含め、世界に紹介したい深淵な思想をもつ農業遺産にふさわしい風景である。

穴吹町西山の尾根上の天空農業

穴吹町西山の尾根上の天空農業 ・穴吹川中流西岸の高地性傾斜地集落の一つが西山である。これは、標高約300mの地点で行われている尾根上を利用した農業風景の一コマ。尾根を利用し、傾斜地にカヤを敷き詰めタマネギや茶、豆類等の多様な作物が栽培されている。カヤ農法は、自然循環型の有機物利用農法であり、阿波の風土が生み出した[ソラの世界]特有の伝統農業であった。また、これは土地の環境を生かした高度な土地利用・技術であり、その農村景観は、平野部で農業する者を圧倒するのである。

穴吹町西山の竹囲いの堆肥場

穴吹町西山の竹囲いの堆肥場 ・穴吹川中流西岸の高地性傾斜地集落の一つが美馬市穴吹町の西山である。その民家の傾斜畑の一角には、四角形に竹囲いをして通気性をよくし、その中に落葉や家庭の生ゴミを投入し、堆肥作りが行われている。生ごみを堆肥にする方法も、カヤ利用農法と同じ、大いなる自然循環の中で生きる農民の智恵が垣間見られるのである。

穴吹町中野宮の巨樹と自然循環型立体農業①

穴吹町中野宮の巨樹と自然循環型立体農業① ・穴吹町の穴吹川中流域西岸、高地性傾斜地集落の一つが中野宮である。この地区の中央には生物多様性を保障する巨樹を残してランドマークとし、傍らに集会所を設けている。巨樹の下で会合するのは神代からの日本の慣習である。巨樹の前面には畑地が作られ、それは自然循環型のカヤ・落葉利用農法であった。その畑周囲の一角には竹林、背後には果樹が植えられ、農作物の種類も多様となり、自然の理に適っている。ユネスコやFAOに提唱すべき、21世紀の自然と人間との共生関係、自然との共生の世紀にふさわしい風景がここに現れている。


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