阿波世界農業遺産

剣山系の水資源管理技術と思想

  1. ソラ世界で傾斜地集落が形成された要因は、水の確保が容易なことにある。剣山系の三波川帯・御荷鉾帯の結晶片岩地帯は、日本を代表する地すべり地帯、しかも日本最大の破砕帯が走っているため、容易に畑地や棚田が造成でき、涵養林さえ残せば山上部からでも水が湧き出るため、人々は水の確保に困らなかった。剣山系では、破砕帯を利用し、必要な分量の水を取り込む傾斜地農業が展開されている。また、農業や飲料、炊事、洗濯、防火、養殖に使用するため、水を谷合や水源より民家へ引き込み、水汲み場や溜池を作り利用している。湧き出す山水は、そのまま飲料水として飲むことができる。そのことは世界的に見て貴重な飲料水が、豊かに保全・確保されている証明でもある。

  2. 水源を確保する剣山系の人々の知恵の一つが、山上に涵養林を残すことであり、「八合切」とも呼ばれる。また、傾斜地集落の周囲を森林で囲ませる知恵で、水資源を確保している。
[作成] 林 博章

剣山系の水資源管理技術と思想1
※神山町阿野字代次の水汲場。結晶片岩を刳り貫き作られている。

剣山系の水資源管理技術と思想2
※美馬郡つるぎ町一宇の下剪宇で、山水で鯉を育てている。

剣山系の水資源管理技術と思想3
※美馬郡つるぎ町一宇の大野で山水を溜め、鯉を飼っている。昔は棚田で鯉を飼っていた。

剣山系の水資源管理技術と思想4
※美馬郡つるぎ町一宇の大宗で、山頂付近で水が湧き出す。

剣山系の水資源管理技術と思想5
※三好市西祖谷山の徳善で、山水が湧き出す場所。

剣山系の水資源管理技術と思想6
※美馬市穴吹町渕名、涵養林を残し水源を確保する思想。

剣山系の水資源管理技術と思想7
※美馬郡つるぎ町一宇字明谷、森林を周囲に残し水資源を確保する。


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