阿波世界農業遺産

国家的な重要性

徳島剣山系の伝統農業の世界的(国家的)な重要性(支援協議会原案) 

  1. 単一作物を栽培する農業が世界農業の主流であるのに対し、剣山系では、山間部の傾斜地という一般的概念で農業には不適な地域でありながら、その傾斜地空間を最大限に生かし、標高、傾斜度、日照量、気候、地勢、地質に応じ作物を栽培し、多様な土地利用に基づき適地適作適方式農業を営んでいることが、世界に前例なき農業だといえる。その知恵、思想、総合技術は、発展途上国や世界・日本の農業不適地に応用できる。また、今後、世界的に予見される水資源危機や食糧危機に対し、剣山系の水資源の管理システムや思想、卓越した保存食文化、危機管理システムなどは、その予防策として広く世界に紹介できる。

  2. 剣山系における傾斜地農業の歴史は、縄文後期頃の焼畑農耕の時代まで遡る。現在展開される傾斜地農業の風景は、約3,000年前より始まった[狩猟・採集]⇒[半栽培]⇒[山焼き・野焼き]⇒[焼畑]⇒[常畑]⇒[棚田水田]という日本農業史の一連の発展過程を重層構造的に示す遺産である。また、そこで展開される農業は、3,000年に渡る重層的な農業技術・知恵・思想の集合体かつ結晶であり、剣山系の人々が紡いできたその遺伝子を評価・維持・継承することは、世界的に重要であり、人類の遺産と呼ぶべきである。

  3. 剣山系は、「四国の水瓶」の役目を果たし、四国全体の農林産業や経済基盤である。また剣山系の傾斜地集落の存在は、水源涵養、洪水の防止、土壌の浸食や崩壊の防止など多面的な機能をもち、吉野川下流域の豊かな暮らしや経済を守っている。剣山系を守ることは、日本一の水質を誇る水資源を守ることでもあり、それは国土保全や防衛にもつながり、善良なる国土が管理されることなる。

  4. 剣山周辺部には、貴重な希少植物や植生が保全・維持され、貴重な野生動物や生物、特異な陸産貝類などが生息し、日本の生態系の宝庫となっている。現在、過疎化や森林管理不足などが理由で、獣害がひどく危機が迫っている。かつての健全な傾斜地集落の姿を取り戻すことは、世界的に貴重な剣山系の自然生態系を守ることにつながる。

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