世界農業遺産の徳島剣山系支援協議会通信-No.6

≪美馬市穴吹町の調査報告≫ [平成26年9月7日(日)]

美馬市穴吹町の調査報告1

 ※渕名の最上部に展開される等高線農業とカヤ場の共存風景


美馬市穴吹町の調査報告2

 ※傾斜地集落の共同体意識を醸成させる「お堂」文化(首野)

・9月7日(日)、再び、世界農業遺産候補地となる美馬市穴吹町の視察調査を行い貴重な成果を得た。メンバーは、支援協議会の会長・永井英彰、副会長の林博章、企画員の野田靖之、香川大学准教授・亀山宏(農学博士)など。馬内では、三宮さんの巨樹とカヤを全面に投入したソバ畑と等高線農業。西山では、急傾斜畑で大規模なウド栽培、25度傾斜畑での円形等高線農業で土壌流失が見られないことを確認、ニホンミツバチの採種技術も聞き取った。渕名では、焼畑農業を継承するアワ栽培、等高線農業、山茶、入らず森といった傾斜地農業を支える精神文化、ブルーベリーの原種、ソバをつなぐ木がある文化の発見、剣山系の中山間地農業の存在こそが、平野下流域の農業や生活を支えているといった貴重な農家の話を伺った。次に、忌部の首が住んだと伝わる首野地区の「薬師堂」(約1,000年の歴史をもつ)を訪問すると、集落全員が集い豊穣等の護摩焚き祈願を行っていた。お堂文化が傾斜地集落の共同体を醸成し、そのことが剣山系の伝統農業を支えていることを改めて確認した。田方の最上部となる山神を祀る森では、枝木は切ってもその木は集落を守る神様の木の枝なので絶対に焼くことはないとの話も伺った。まさしく現在に至っても自然への畏敬・感謝という宗教的心情をもって傾斜地農業が営まれていることが分かった。このようなデータ蓄積は、世界農業遺産に認定された後でも重要であり、世界に紹介したい貴重な精神文化となるだろう。

[作成] 林 博章

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